ひろゆきの交渉術
東出昌大とひろゆきの番組「世界の果てに置いてきた」を見た。ひろゆきが南米で、ぼったくろうとしてくるホテルと徹底的に戦うシーンがあった。予約したのに部屋がないと言われる、部屋を用意すると言ったら倍の値段を提示される、お釣りの30円を返してもらえない。そういった場面で一切諦めず、全部戦って全部勝ち取っていく。
30円のお釣りを返せというくだりが特に印象に残った。30円なんて、日本だったら「まあいいか」で済ませてしまう金額だ。でもひろゆきは諦めない。「返してもらう権利がある」という一点を崩さずに、淡々と交渉し続ける。感情的にもならないし、諦めもしない。その姿勢が一番怖いというか、強いと思った。
そうでもしないと南米ではまともに生活できないのだろうけど、自分にはない厚かましさというか、生存の能力というか、見ていて痛快だった。こういう人がお金持ちになるのは頷ける。羨ましいとも思った。
この番組、東出昌大との組み合わせも面白い。東出はどちらかというと流れに身を任せるタイプに見えて、ひろゆきとの対比がちょうどいい。自分は東出側の人間だなと思いながら見ていた。流されながらもなんとかなっていく東出と、論理で全部解決しにいくひろゆき。どちらがいいとか悪いとかではなく、自分はどっちに近いかを考えると、明らかに東出だ。それがいいこともあるけど、今日みたいな場面では東出気質が仇になる。
前撮りで交渉しなかった話
その映像を見ながら、自分のことを思い出した。結婚式の前撮りで、タキシードのサイズが合わないことが数週間前からわかっていた。結局当日は自分の礼服を着ることになった。ところが、嫁のドレスと2人分の衣装レンタルのセット価格をそのまま請求された。タキシードは着ていないのに、だ。
これはおかしいと思った。タキシードを着ていないのにタキシード込みのセット価格を払うのはおかしい。せめて礼服のクリーニング代を出してもらうとか、セット価格の見直しを交渉するとか、できることはあったはずだ。正当な話だし、こちらの非ではない。言っても問題ないはずだった。サイズが合わないことが判明したのは数週間前で、その時点で話し合う機会もあったはずだ。それをずるずると当日まで持ち越してしまったのも、自分の甘さだったかもしれない。
でも、しなかった。これからも付き合っていく相手だから関係を悪くしたくなかったのと、式関係の準備でじわじわ疲れが溜まっていて、交渉が億劫になっていた。揉めたくない、面倒くさい、そういうもんだろう。そうやって自分に言い聞かせて、諦めた。払った。
結婚式の準備というのは、決めることが多くて消耗する。衣装、会場の細かい設定、プロフィールムービー、招待客への連絡、費用の確認。それが断続的に続いていると、いちいちエネルギーを使えなくなってくる。「ここは大事にしなくていい」という判断が、疲れているとどんどん甘くなる。交渉もその一つだった。
今になって少し後悔している。結婚式というのはお金がかかるものだし、業者との関係も大事にしたい。その気持ちはわかる。でも、正当な主張を引っ込めるのとは別の話だ。相手との関係を気にするあまり、自分が損をすることを「仕方ない」と処理してしまう癖がある。それは交渉が苦手なのとは少し違う。疲れているとどうしても守りに入ってしまう。そういうことだと思う。
もっと厚かましく生きたい
ひろゆきが30円を諦めずに取り返すのを見て、そういうことだよなと思った。金額の大小じゃなくて、自分が正しいと思ったことを貫けるかどうかの話だ。ひろゆきはそれを一切引っ込めない。感情的にもならず、しつこくもなく、ただ淡々と「返してください」と言い続ける。その冷静さが一番真似できないところだし、一番強いところだと思う。
結婚式はまだ本番がある。費用の最終確認、当日の段取り、まだやり取りは続く。次は同じことを繰り返さないようにしたい。疲れていても、おかしいと思ったことはちゃんと言う。それだけのことなんだけど、これが意外と難しい。場数が足りないのかもしれないし、体力と気力がないとできないことでもある。
結婚式はそういうもんだと割り切る気持ちと、節約できるところは節約する・交渉できるところはするという気持ちが、ずっとせめぎ合っている。どこまで戦うか、どこで引くかの判断は、正直まだうまくできていない。結婚式を通じてそれを学んでいる気もする。
もっと厚かましく生きたい。ひろゆきのようには無理でも、せめて自分が損をしているとわかっている場面では、ちゃんと口を開けるようになりたい。相手との関係を守りながら、自分の正当な主張もする。それは矛盾しないはずだ。疲れていてもできるように、普段から鍛えておくしかない。