「うちの会社、また組織変更だって」

最近、こういう話を職場でよく聞く。
電機メーカーに勤めている人なら、特に実感してるんじゃないかと思う。
日本の電機メーカー業界はまさに大航海時代でどこも大きく変わっている(ろうとしている)。

特に2026年現在、日本の大手電機メーカーが一斉に「脱・家電」の動きを加速させている。
ソニー、パナソニック、シャープ、日立、三菱電機。
各社の方向性はバラバラに見えて、実は同じ流れの中にある。

今回はそれをまとめておく。

業界の外から見ている人にも、中にいる人にも、「今何が起きているか」を知ってほしいから。


各社の今:何がどう変わっているのか

ソニー|「家電メーカー」じゃなくなっていた

今のソニーの稼ぎ頭は、テレビでも冷蔵庫でもない。
PlayStation、映画、音楽。エンタメ事業だ。

ゲーム部門の売上はソニー全体の約3割を占めるまでになっている。
「ソニーのテレビ、いいよね」という時代から、「ソニーってゲームと映画の会社だよね」へ。
家電好きとしては少し寂しい気もするけど、これが現実だ。

特にPS5とPlayStation Networkのサブスク収益が安定していて、
ゲームは「売り切り」から「継続課金」モデルへ移行しつつある。
家電は1台買ったら終わりだが、ゲームは毎月課金が続く。ビジネスモデルとしての強さが違う。

ソニーの家電部門がなくなるわけじゃないけれど、
会社全体の重心がエンタメ側に大きく傾いているのは間違いない。

パナソニック|リストラの真っ最中

1万人規模の人員削減が進行中。
「終身雇用の象徴」みたいな会社が、ここまで大きく動くのは珍しい。

構造改革フェーズにあり、不採算事業の整理と事業ポートフォリオの見直しを同時に進めている。
EV向け電池(パナソニックエナジー)への集中投資が今後の軸になりそうだ。

テスラへの電池供給で知名度が上がったパナソニックエナジーだが、
EV市場全体の成長が鈍化する中、ここへの全振りがどう出るかはまだわからない。
家電・住設・車載・電池と幅広く持ってきた会社が、いよいよ「選択と集中」を迫られている段階だ。

パナソニックブランドの家電は引き続き強いが、
会社の未来を背負う事業は、もはや洗濯機でも冷蔵庫でもない。

シャープ|「軽くなる」ことを選んだ

液晶ディスプレー事業の縮小が象徴的だ。
「液晶のシャープ」というブランドイメージを自ら手放すのは、相当な決断だったと思う。

アセットライト経営(資産を持たない軽い経営)へのシフトで、
製造業からサービス・ソリューション寄りへ軸足を移している。

鴻海(ホンハイ)傘下に入ってから約10年。
「台湾資本の日本ブランド」として独自路線を歩んできたが、
巨大な製造設備を持つビジネスモデルそのものを見直している状況だ。

AQUOS(テレビ・スマホ)ブランドの認知度はまだ高いが、
以前のような「技術力で押し切る」戦略は取りにくくなっている。

日立|「家電を売る会社」から「AIインフラの会社」へ

個人的に一番「変わったな」と感じるのが日立。

今の日立はAIプラットフォーム「Lumada 3.0」が主戦場。
電力・鉄道・医療などのインフラをAIで最適化するビジネスに全振りしている。
AIエージェントの活用も積極的で、2026年現在は完全に「ITの会社」としての色が強い。

冷蔵庫とエアコンは作り続けてるけど、日立にとってそこはもうメインじゃない。
日立の家電部門(日立グローバルライフソリューションズ)は実質的に分離した形で動いていて、
本体はインフラ×デジタルに経営資源を集中させている。

「日立の冷蔵庫を買った」という人より、
「日立が鉄道のAI管理システムを受注した」というニュースのほうが、
今の日立を正確に表している。

三菱電機|「受注残が2年分」という強さ

一方、三菱電機は比較的落ち着いた構造変革をしている印象だ。
半導体・データセンター向けの需要が追い風で、受注残が売上の約2年分あるという。

デジタル企業化を掲げながらも、インフラ・産業機器での基盤が厚い分、
急激なリストラや事業売却は今のところ起きていない。

パワー半導体(電力変換に使う半導体)の需要がEV・再生エネルギーの拡大で急増しており、
三菱電機はここで強みを持っている。
地味に見えて、実は今の時代に一番フィットした事業構造かもしれない。


5社の今を一覧で見ると

メーカー方向性ひとこと
ソニーエンタメ事業シフトゲーム・映画が稼ぎ頭。家電はサブになった
パナソニック大規模リストラ中1万人削減。EV電池に賭ける
シャープアセットライト化液晶縮小。「持たない経営」へ
日立脱家電・AI注力Lumada 3.0でインフラAI化。完全にIT企業
三菱電機デジタル企業化受注残2年分。半導体・データセンターが追い風

共通して見えてくること

5社を並べて気づくのは、全員が「モノを売る会社」から離れようとしているということだ。

家電は作れば売れる時代が終わった。
中国・韓国メーカーとのコスト競争では勝ちにくい。
だから日本の電機メーカーは「モノ」より「コト」や「仕組み」で価値を作ろうとしている。

ソニーはエンタメ体験を売る。
日立はインフラの最適化を売る。
三菱電機はパワー半導体という「目に見えない部品」で存在感を出す。

形は違うけど、方向性は同じだ。
「家電メーカー」という看板を下ろして、それぞれの強みで生き残りを図っている。


「うちの会社も一緒だ」と思った人へ

正直に言う。
これを書きながら、自分の職場のことを考えていた。

組織改編、事業撤退、「選択と集中」という言葉。
大手電機メーカーで起きていることは、そこで働く人にとっては他人事じゃない。

「自分の部署は大丈夫か」「この仕事、5年後もあるのか」
そんなことを考えながら仕事している人、少なくないと思う。

だからといって「終わり」じゃない。
変化の中にいるとき、一番大事なのは「自分のスキルと時間をどこに使うか」を自分で決めることだと思う。

会社の戦略が変わっても、自分がどう動くかは自分次第だ。
業界の変化を「知っている人」と「知らない人」では、同じ職場にいても見える景色が全然違う。

まずは知ること。そこから始めればいい。