最近、職場の同僚が「チャッピーに聞いたんだけど」と言い始めた。引き継ぎ資料がAIで作られたらしく、レイアウトが崩れたまま送られてきた。まあ、引き継ぎがあっただけまだマシかと思いつつも、心のどこかで「ちょっと待って」という気持ちが湧いてきた。

そしてとどめを刺したのは、妻だ。「ちゃぴこに聞いてみる」と言い始め、どうやら身の上相談をAIにするようになったらしい。旦那としての存在意義に若干の疑問を覚えながらも(笑)、しかも機嫌がいいかというとそうでもない。それで気になって調べてみたら、早稲田大学の研究データが出てきた。「AIに助言を求める人が75%」という数字を見て、「あ、これって全然他人事じゃない」と思った。

この記事では、そのデータをもとにAIへの感情的依存の実態を整理しつつ、私自身が感じた「人間関係って意識しないと続かないんだな」という話をしたい。生活改善の文脈で、デジタルとの付き合い方を一緒に考えてみてほしい。


結論から言うと:AIへの依存は「便利」と「孤独」の間にある

結論から言うと、AIに頼ること自体は悪くない。ただ、感情の置き場所がAIに偏り始めると、人間関係が静かに薄くなっていく。それを意識しないままでいると、気づいたときには「誘える友達がいない」状態になっていた、という人が出始めている。


早稲田大学の研究が明らかにした「AIとの距離感」

2024年、早稲田大学文学学術院の楊帆助手・小塩真司教授らの研究チームが、中国の若者361人を対象に調査を行った。結果はこうだ。

項目 割合
AIに助言を求める 75%
AIを「常に頼れる存在」と感じる 約4割(39%)
感情的につらいときにAIに頼る 20%

この研究では「愛着理論」という心理学の枠組みを使って、人がAIに対して人間関係と似たような「感情的なつながり」を感じているかを調べた。結果として、AIとのやり取りにも「もっと近づきたい気持ち」と「距離をとりたい気持ち」の両方が見られたという。

研究チームはこの結果を「AIと人間の間に実際に愛着関係があると主張するものではない」と慎重に述べている。ただ、人がAIに対して感情的な期待を向け始めているのは事実だ。75%が助言を求め、4割が「頼れる存在」と感じているという数字は、もはや一部の話ではない。


職場でも家庭でも「AI相談」が当たり前になってきた

冒頭の話に戻るが、職場の同僚の「チャッピーに聞いた」発言は、最初は笑い話だった。でも考えてみると、私も毎朝のように文章のチェックをAIに頼んでいるし、献立に迷ったときもAIに聞いている。人のことをあまり言えない。

問題は「使う頻度」よりも、「何を任せているか」だと思う。

  • 仕事の効率化のためにAIを使う → これは普通に便利
  • 「誰かに話したい」という気持ちをAIで代替する → これが積み重なると、人間関係が薄れていく

妻がAIに身の上相談をしているのを知ったとき、最初は「そこまで話せる相手がいないのかな」と思った。でもよく考えると、私自身も帰宅後に「今日しんどかった」と誰かに言うより、AIで検索したり動画を見たりして気分を切り替えることが増えていた。お互い様だった。


AIが「頼れる存在」になるほど、人間に頼りにくくなる

AIはいつでも返事をしてくれる。否定しない。怒らない。疲れていても対応してくれる。これは正直、かなり快適だ。だからこそ、じわじわと「人間に頼む」ハードルが上がっていく。

研究でも指摘されているとおり、孤立感や不安を抱えている人がAIに頼りやすくなる構造がある。AIが「感情を操作しすぎない倫理的な設計」を求められているのも、そういう背景があるからだ。

ただ、これは「AIが悪い」という話ではない。AIが便利すぎるあまり、人間への連絡を後回しにしがちになる、という自分の習慣の問題だ。「返事が早いから」「気を使わなくていいから」という理由でAIに向かうことが増えると、人間関係の筋肉が落ちていく感覚がある。


私が気づいたこと:「誘う」という行為の偉大さ

この話を考えるようになってから、私は意識的に飲み会を自分から誘うようにした。誘うのって、実はけっこうエネルギーがいる。「断られたらどうしよう」とか「迷惑じゃないかな」とか、地味に気を使う。でも誘ってみると、相手はたいてい喜んでくれる。

AIに相談するのは簡単だ。でも「久しぶりに話したい」「一緒に飲みたい」と人に連絡することは、相手への意思表示でもある。それは関係を続けようとする、能動的な行動だ。

人間関係って、意識しないと自然に薄くなっていく。特に30代以降は、みんな忙しくて「そのうち連絡しよう」が何ヶ月も続く。気づいたら疎遠になっていた、という経験は誰にでもある。AIへの依存を見直すタイミングで、同時に「人に声をかける習慣」を取り戻せないか、と考えるようになった。


AIとの付き合い方を見直す:3つの実践ポイント

「AIを使うな」ということではなく、感情的な役割をどこまでAIに任せるかを意識してみてほしい。私が実際に試したことを3つ挙げる。

① 「誰かに話したい」と感じたときは、まず人間に連絡してみる

AIに愚痴を言う前に、LINEで一言送ってみる。返事が来ないこともあるけど、「ちゃんと人間関係を動かしている」という感覚が戻ってくる。

② AIに頼む前に「これは自分で考えられるか」と一度立ち止まる

効率化のためのAI活用と、思考を丸投げするAI活用は違う。献立や文章チェックはいい。でも「どうすればいいかわからない」という感情をそのままAIにぶつけることが続くと、自分で考える力が落ちていく。

③ 月に1回、リアルで人と会う予定を先に入れる

「そのうち」では会えない。先に予定を入れてしまうのが一番確実だ。カレンダーに入っていると、それだけで「ちゃんと人間関係を続けている」という安心感が出てくる。


こんな人に読んでほしい・そうでない人

こんな人におすすめ

  • 最近、人に連絡する頻度が減ってきたと感じている人
  • 悩みをAIに話すことが増えて、友人に話す機会が減っている人
  • 職場でも家庭でもAI頼みになってきて、少し違和感を感じている人
  • 「誘いたいけど、なんとなく腰が重い」が続いている人

こういう人には向いていない内容かも

  • AIをあくまで仕事ツールとして割り切れていて、感情的な依存は一切ない人
  • リアルの人間関係がすでに充実していて、特に課題を感じていない人

まとめ:AIを使いながら、人間関係の筋肉を落とさない

早稲田大学の研究が示した「75%がAIに助言を求める」という数字は、もはや特別な人の話ではない。私も、あなたも、気づかないうちにAIに感情的な役割を任せ始めている。

それ自体は悪いことではない。ただ、AIに頼りやすくなるほど、人間に頼る筋肉が落ちていくのは確かだ。誘うこと、連絡すること、会いに行くこと。これは意識しないと、どんどん後回しになる。

まず、連絡していない人に一言送ってみてほしい。「久しぶり、元気?」それだけでいい。AIが便利な時代だからこそ、人間から声をかけることの価値が上がっている気がする。